放射線教育オンライン意見交換会 放射線教育オンライン意見交換会

中学校の教育現場では2021年度の学習指導要領改正に伴い2年生で学習する電流とその利用の単元で放射線の性質と利用にも触れることとなり、全ての子供達が放射線について学びます。様々な学校での放射線に関する学習の事例紹介、高大連携での教育事例、授業を行う上での問題点などを発表頂き、専門家を交えた意見交換を行います。

開催日
2023年8月5日(土)
13時00分~16時30分
実施方法
大阪科学技術館702号室における対面と、
Zoom オンラインウェビナーによるハイブリッド開催

イベントプログラム

第1部
 基調講演

全国の理科教育を牽引するお二人が、放射線教育に関するナレッジやノウハウをお話しします。

基調講演1 文部科学省 国立教育政策研究所教育課程研究センター
小林 一人先生

講演タイトル:放射線教育と学習指導要領

概要:現在の学習指導要領では現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力を教科横断的な視点で育成することが求められている。特に、未曾有の大災害となった東日本大震災や平成28年の熊本地震をはじめとする災害等による困難を乗り越え、時代の社会を形成するという大きな役割を担うことを期待している。その一例として、中学校理科では放射線の科学的な理解や科学的に探究する態度の育成があげられ、教科横断的に放射線に関する科学的な理解や科学的に思考し、情報を正しく理解する力を育成することとしている。
 今回は学習指導要領において育成すべきとされる資質・能力や文部科学省が発行している放射線副読本、放射線教育の実施状況調査についてご紹介する。

基調講演2 加速キッチン合同会社、早稲田大学
田中 香津生先生
講演タイトル:中高生の放射線探究ネットワーク

概要:加速キッチンではこれまで200名、30校以上の全国の中高生の放射線探究支援を行っています。
 まず、放射線探究を希望する中高生に自分で組み立て自宅で測定可能な検出器を貸与します。シンチレーターの遮光・接着を行い、目的に合わせてデータ収集プログラムをコーディングすることで、検出器や放射線の仕組みをよく理解することができます。
 また、Discordを用いたオンラインコミュニティを形成し、この中でメンター大学生や研究者が探究をチャットやビデオ通話でサポートすることで、全国のどこでも本格的な探究を行っています。これまで宇宙、素粒子、医療など様々な分野で中高生が探究を行い論文や学会発表を数多く行っており、今後さらに多くの中高生へと広げていく予定です。本講演では、具体的な探究内容や探究コミュニティの運営について紹介します。

第2部
 放射線教育における
実践事例発表

現役で教壇に立たれる教員の方々が、放射線教育の実践事例を発表。
具体的な理解を促すためのポイントや、授業を実施する上で注意していることなどをお話します。

 

講演1 京都教育大学 附属京都小中学校
野ヶ山 康弘先生
講演タイトル:放射線のリスクとベネフィット~福島復興11年の変遷~

概要: 「放射線のリスクとベネフィット」の一例として「福島の震災復興」を教材化した事例の有効性を報告する。本研究では,放射線に対する正しい知識を身につけていく要素として,①中立な立場とは何か,②確かな事実を知るとは何か,③活用するとは何か,ということを考えることが必要であり,その中で「確かな事実」を知ることが重要であることが明らかとなった。それと同時に「知らないこと」や「放射線に対する不安」が学びに大きな影響を与えることも明らかとなった。

 

講演2 筑波大学 システム情報工学研究群
羽田野 祐子先生
講演タイトル:霧箱による大学公開講座について

概要: 霧箱2種類により、一般向けの公開講座を実施した。昨年度までの公開講座等で使用した霧箱においては、線種の判別まではなかなかできず、さらに来場者が終わりまで霧を見られずに帰宅せざるをえない場面にたびたび遭遇していた。今回は高電圧により容器内の雑イオン除去機構が組み込まれた霧箱を使用した。これにより、飛跡が見えない人がいなくなり、さらに線種の判別も可能となり、効果的な放射線教育を行うことができた。

 

講演3 福島県立郡山萌世高等学校
石井 伸弥先生
講演タイトル:福島で学ぶ福島 ~課外活動による福島学の実践報告~

概要: 2015年度より部活動の生徒や有志の生徒を対象として、福島をテーマとした課外学習を行ってきた。時間と共に活動内容は変遷していったものの、例年共通して行ってきたことは福島第一原発を含めた原子力被災地視察(他校との合同もあり)、出前講座、ワークショップ、発表会等での生徒発表である。これまでの具体的な取り組みや、実践の中で見えてきた福島の高校生が無意識に持っていると思われる福島に対する認識について報告したい 。

 

講演4 大阪高校
谷脇 鉄平先生・松長 瞬先生
講演タイトル:本校初の化学基礎・地学基礎における放射線に関する科目横断型授業の教育実践

概要: 昨年、本校の夏期講座で(公財)日本科学技術振興財団の放射線(霧箱)に関する出前授業を通じて、大阪公立大学の秋吉優史先生をご紹介いただき放射線(クルックス管)に関する共同研究(高大接続活動)を行った。研究内容は、生徒たちがハイスクールラジエーションで発表し、生徒たちの主体的な取り組みを支援することができた。また、今年度の1学期に化学基礎・地学基礎でも放射線(放射性同位体と半減期)に関する科目横断型授業を行ったので、それらの実践内容を紹介する。

 

講演5 広島市立福木中学校
森島 浩一先生
講演タイトル:生徒に自然放射線を実感させる授業実践例

概要: 中学生の持つ「放射線」や「放射能」についてのイメージは、原子爆弾の被害や原発事故の影響もあり、「怖い」「危ない」といったものが多く、「放射線に当たると白血病になる」と思っている生徒も多い。中学2年の理科の授業で、「放射線の種類」を学習するが、原爆や原発事故の時に発生する特殊なもので、多くの生徒が「日常的には無い」と思っている。放射線は身近に存在しており、その線量が健康に与える影響が極めて小さいことを実感させるために、簡易測定装置を生徒全員に渡し、放射線の多いところを探して測定する授業を実施している。ネットやデータだけでなく、自分自身で測定することで自然放射線の存在を実感し、どの程度の線量からが危険であるかを実感するようになった。この授業実践の具体的な内容とその成果について報告する。

 

話題提供 大阪公立大学 研究推進機構 放射線研究センター
准教授 秋吉 優史
講演タイトル:クルックス管からの低エネルギーX線測定サービスのお知らせ

概要: 2021年度から本格実施となった中学理科の新しい学習指導要領では、2年生で学習する電流とその利用の単元で「真空放電と関連づけながら放射線の性質と利用にも触れること」となっているが、クルックス管のX線安全管理についてまだ十分な周知がされていない。クルックス管からの低エネルギーのX線は一般に入手できるサーベイメーターでは正常な測定が出来ず、自分たちが使う装置の安全性を確認する事が出来ない。このため、大阪公大の「放射線教育振興プロジェクト」に対するふるさと納税による寄付によって導入したnano Dot線量計とリーダーにより、全国の学校に無償で線量計を郵送して測定するサービスを提供する。

 

第3部
 意見交換会

参加者の方々から募った質問への回答や、各地域の教育現場における悩みや課題の共有などを行います。
質問は事前に申し込みフォームからお送りいただけます。

開催概要

開催日時
2023年8月5日(土) 13:00~16:30
実施方法
大阪科学技術館702号室における対面と、Zoom オンラインウェビナーによるハイブリッド開催
参加費
無料
対象
放射線教育に関わる学校の先生方、企業・団体の方
主催
「みんなのくらしと放射線」知識普及実行委員会(事務局:大阪公立大学)
ファシリテーター
大阪公立大学 放射線研究センター 秋吉 優史

申し込み

以下のフォームよりお申込みください。
※当日のZoomURLは申込みいただいた方にメールにて連絡いたします。