ハイスクール ラジエーションクラス 開催報告 ハイスクール ラジエーションクラス 開催報告

放射線への理解が深まる高校生対象のイベント
「ハイスクールラジエーションクラス」を開催しました。
3つのプログラムを通じて、
放射線の世界への知識を深めました。

開催概要

開催日時
2022年10月30日(日)12:30~16:10
実施方法
対面・オンラインのハイブリッド開催
会場
大阪公立大学 I-siteなんば
主催
「みんなのくらしと放射線」知識普及実行委員会
対象
研究を発表していただける高校生、高等専門学校の1~3年生
発表校
名古屋経済大学市邨高等学校
大阪高等学校
加速キッチン
(セントメリーズインターナショナルスクール・渋谷教育学園幕張高等学校)
埼玉県立川越女子高等学校
神奈川県立川和高等学校
開成高等学校
京都府立桃山高等学校
福島県立郡山萌世高等学校
福井県立若狭高等学校
福島県立安達高等学校
プログラム
第一部 講演
第二部 高校生研究発表
第三部 大学生との交流会
↓

第一部 講演
(医療における放射線活用)

講師 ベルランド総合病院 診療技術部
鈴木 賢昭様

放射線を医療現場で活用するプロフェッショナルより診療放射線技師の職業内容や医療で活躍する放射線技術について講演いただきました。

第二部 
高校生研究発表

テーマ「放射線と私たち」

放射線について広く考え、高校生ならではの視点で研究・調査した成果を発表しました。
各校の発表を大阪公立大学の教員が審査・講評し、最優秀賞(1校)と奨励賞(2校)決定しました。
※各校発表時間8分+質疑2分

Presentation 1

名古屋経済大学市邨高等学校
「熱陰極型クルックス管の電子の速さの測定」

現地参加

講評 秋吉 優史 准教授

クルックス管はレントゲン博士がエックス線を発見したことで有名ですが、J.J.トムソンが比電荷を測定した実験でも使われた装置としても知られています。今回の実験では高い電圧をかけなくてはならない通常の冷陰極ではなく、熱陰極を用いた装置を使用しており、低い電圧で電子線を発生させることが出来るためエックス線の漏洩が無く、低い電圧でも大きく偏向することから良い選択をされたと思います。トムソンと違い比電荷は既知の物として速度を求めた計算結果とエネルギー保存則から求めた値との比較をしていますが、それぞれどのように求めたか、具体的な数値を示しながら説明するとより分かりやすかったかと思います。電子線の伸び縮みという現象も非常に気になります。今後の更なる研究を期待します。

Presentation 2

大阪高等学校
「クルックス管及び霧箱(ペルチェ素子型)を用いた
放射線(光電子)の
飛跡距離測定及び実験を通じて見えた課題」

現地参加

講評 秋吉 優史 准教授

私が日本科学技術振興財団の出前授業で訪問した際に実験に興味を持って頂き、共同研究という形で実験を行って頂きました(なお、この発表の審査に私は加わっていません)。誘導コイルの放電極距離を20mmに押さえた上にガラスの水槽で遮蔽もしたと言う事で、X線に対する安全性は十分守られた条件で飛跡の長さの測定も行ったのは、ただ単にデータを出すだけでなく放射線安全管理という面からも素晴らしいと思います。それぞれの放電極長に対して1200~1600本の飛跡の長さの測定を行ったとのことで、大変な作業だったと思います。結果の整理について、平均と標準偏差を用いて示すとより良いと思います。今後、放射線量の測定を行い安全を確認しつつ、より高い電圧でクルックス管を動作させた場合に飛跡の長さが変化するかについて研究して頂くことを期待します。

Presentation 3

加速キッチン
(セントメリーズインターナショナルスクール・
渋谷教育学園幕張高等学校)
「Web カメラを用いた放射線の測定と画像解析」

現地参加

講評 伊藤 憲男 助教

簡単に手に入るWebカメラを放射線検出器として利用出来るかと試行錯誤され、Webカメラに放射線が反応していることが分かり、さらに放射線の種類が分かるかどうかまで確かめようとした意欲的な発表でした。
放射線の線源を変えながら得られた画像の特徴(輝度のヒストグラム)で放射線の種類を決めようと試みているようですね。まだうまくいく方法は見つかっていませんが、輝度のヒストグラムに注目された、またまだ発展していく研究です。

Presentation 4

埼玉県立川越女子高等学校
「散乱陽子を用いた線量分布の可視化」

奨励賞

オンライン参加

講評 伊藤 憲男 助教

陽子線治療での患者さん被ばく低減化のための研究発表で、シミュレーションの結果の検証を散乱陽子線を用いて行おうとする新しい試みを検討されたのだと評価されます。実験で得られたデータをシミュレーションの結果をまだ完全に説明できている訳ではありませんが、ビームの中心からの距離と線量分布も予想でき、これからの期待がもてる発表でした。高校生では難しいと思いますが、シミュレーションをどのような仮定と物理的プロセスで行ったかを理解できるようになれば、シミュレーションの結果をさらに深く検討できるようになります。

Presentation 5

神奈川県立川和高等学校
「霧箱で見る放射線と宇宙線の世界」

最優秀賞

現地参加

講評 松浦 寬人 教授

この研究は、グループで行ったのではなく、発表者が中学生時代より個人で行ってきたものですね。最初の霧箱で、うまく計測できなかったのはアルファ線を出す線源が利用できなかったためと思われます。専門家のアドバイスがあったとはいえ、放射線の種類を区別して測定が行えるまでになった努力には敬意を払います。特に、動画を測定し、飛跡の測定を容易にする工夫と努力は大学生レベルのものであると言えるかと思います。
あえて今後の研究のためにアドバイスするとすれば、「宇宙線」というものは、非常に高いエネルギーの電子あるいは陽子からなる一次宇宙線と、これらが大気中で生み出す二次宇宙線が混在しています。これを理解して、より正確な計測法を工夫していただくことを期待します。

Presentation 6

開成高等学校
「富士山での宇宙線観測」

奨励賞

オンライン参加

講評 伊藤 憲男 助教

実際に富士山に登られ、宇宙線を観測した結果を発表してもらいました。これは、宇宙線の強度の高さによる変化が分かる貴重なデータになります。そのままのデータでは高さとの相関はなかったという結果と、検出器を2台使用して上空からの宇宙線のみを観測すると、標高が増すにつれて宇宙線強度が増えるという結果が得られました。
実測データに指数関数で近似してみる解析も行ったすばらしい研究でした。 近似した指数関数の係数の意味について考察してみましょう。

Presentation 7

京都府立桃山高等学校
「放射線測定による大文字山の地質調査」

現地参加

講評 古田 雅一 教授

本研究は花崗岩とホルンフェルスから放出される自然放射線の強度の違いを指標として身近な地域の地質図を検証しようとしたものです。本研究の良い点は先輩方の先行研究の結果をきちんと踏まえ、新たな地域のフィールドワークに活かそうとしている点、さらに調査しようとする地域の地質図など、先行研究の調査、理解を踏まえて実際の調査を行っている点など、一般的な研究の手法にきちんと従っているところだと感じました。さらに岩石から放出される放射線量の変化を調べることで地表からは観察しづらい岩石の種類や分布が容易に評価できることも興味深い点だと思います。今後の課題としては実際の岩石の存在分布が市販の測定機を用いたフィールドワークでどの程度正確に把握できるかを検証していくことと考えられます。そのためにはそれぞれの岩石にはどのような放射性核種がどのくらいの量含まれているのかを文献を調べること、フィールドワークに用いる市販の放射線測定器の特性、すなわちどのような種類の放射線の検出に向いているかをよく理解することが必要です。これによりさらに精密な結果が得られるのではないかと期待しています。今後の研究の発展を楽しみにしております。

Presentation 8

福島県立郡山萌世高等学校
「『 なんとなく 』 のふくしま
〜 無意識下で生じるイメージとは? 〜 」

オンライン参加

講評 朝田 良子 助教

まず発表テーマ内の「なんとなくの」という言葉に大変興味を持ちました。発表では町の写真や地図から始まり、福島の現在の様子、さらには近畿地方の地図と比べることで福島の大きさや福島第一原発からの距離感が分かりやすく、県外の方々にも研究背景がよく伝わったと思います。また、福島へのイメージが意識的なのか、無意識なのかという問いかけは、聞いていた一人一人の気づきや考えるきっかけとなりました。福島へのイメージに対するテーマを発表することはとても大切なことだと思います。さらにメディア関係者への意識調査では課題に対するアンケート内容も具体的だったのでその結果がまとまれば、よりよい発表になると思います。最後に「復興ではなく、新興ではないだろうか」という言葉から、今回の発表で終わりではなく、この研究テーマも福島も「これから」さらに進んでいくという発表者の思いが伝わりました。今後行うアンケートやフィールドワークを通じて伝えたいことをぜひ発表してほしいと思います。

Presentation 9

福井県立若狭高等学校
「学校設備による放射線の遮蔽効果について」

オンライン参加

講評 川又 修一 教授

放射線に関する基礎的事項に関して丁寧に調べていることはとても良かったと思います。各実験で複数回測定して平均を取っているとのことですが、とても大切なことですね。
実験1では、距離の2乗に反比例するとした場合の曲線もグラフにプロットしてもらえればよかったと思います。実験2では、それぞれの厚さについて横軸を密度にしたグラフもプロットしてみるとさらに興味深かったのではと思います。実験3の結果グラフで、β線、γ線とそれぞれ赤線および青線で囲んでいることについて、説明の記載があればさらに良かったでしょう。実験4について、身の回りのものについていろいろ調べているのはとても良いと思います。また、結果は表だけではなく例えば棒グラフにしてみるとわかりやすいです。これからも活発に活動を続けてもらえることを期待しています。科学研究の楽しさを周囲の人たちに伝えられるようになってもらえるとうれしく思います。

Presentation 10

福島県立安達高等学校
「災害に強い街づくり
~「道の駅」に見る災害と知識循環型施設~ 」

オンライン参加

講評 児玉 靖司 教授

福島県に在住する高校生による地元、二本松市における災害に強い街づくりへの取り組みについての発表でした。発表者の一つめの提案は、地元に点在する「道の駅」を新しい災害拠点として整備することです。確かに道の駅は、休憩機能に加えて、情報発信機能や地域連携機能を備えており、発表者の提案には説得力があります。さらに二つめには、震災の経験を活かした知識循環型施設として、「道の駅」の防災機能を見直すことを提案しています。このような「道の駅」をモデルとした施設を増やすことで災害に強い街づくりを実現したいとの発表でした。以上、二本松市役所をはじめ、「道の駅」現場に働く方々からの情報収集を元にし、自分のアイデアを盛り込み、明快に提案している点、さらには、このような地元に密着した社会的課題に関心を持って調査し、発表した点について高く評価します。

第三部 
大学生との交流会

大阪公立大学の学生とグループワーク形式で交流会を行いました。
放射線分野の研究活動はもちろん、キャンパスライフの送り方など、
大学生活に関して気になることを共有する場になりました。

表彰

最優秀賞
神奈川県立川和高校
奨励賞
埼玉県立川越女子高等学校
開成高等学校