放射線教育オンライン意見交換会 放射線教育オンライン意見交換会

放射線教育に関わる学校の先生方、企業・団体の皆様を対象に学校現場での実践事例を通して、
放射線教育のノウハウを共有するイベント「放射線教育オンライン意見交換会」を開催しました。
放射線教育に関わる方々が抱えている課題の共有と、解決のための糸口を模索しました。

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開催概要

開催日
2022年9月18日(火)13時30分~16時00分
実施方法
オンライン(zoom ウェビナー)
対象
放射線教育に関わる学校の先生方、企業・団体の方
主催
「みんなのくらしと放射線」知識普及実行委員会
講演者
  • 全国中学理科教育研究会前会長 山口 晃弘
  • 日本科学技術振興財団 掛布 智久
  • 名古屋経済大学市邨高等学校中学校 大津 浩一
  • 美浜町エネルギー環境教育体験館「きいぱす」/福井県児童科学館 小鍛治 優
  • 世田谷区立千歳中学校 青木 久美子
  • 愛知教育大学附属名古屋中学校 奈良 大
ファシリテーター
大阪公立大学 放射線研究センター 秋吉 優史

放射線教育
オンライン意見交換会の様子

冒頭挨拶

大阪公立大学 放射線研究センター
秋吉 優史

2021年度から中学校の学習指導要領が改訂され、全面実施となった。教育現場で1年間実施してみて、生徒の反応や先生方がどのような感想を持たれたかなどについて、この意見交換会が共有の場になればと思う。

第1部 基調講演

「高まる放射線教育の重要性」
全国中学理科教育研究会前会長
山口 晃弘

概要

新しい学習指導要領では、自然放射線について触れることに加え、放射線について科学的に理解することが重要であり、さらに放射線に関する学習を通して、生徒たちが自ら思考し、判断する力を育成することが示されています。放射線についての科学的理解の重要性と放射線学習を通した思考・判断の能力の育成にも言及している。
持続可能な社会の実現のためには、様々な問題の解決が必須。その中でも、科学的な思考・判断する力を身に付けることは、避けて通ることのできない課題。ますます放射線教育の重要性は高まっていると言える。

「教育用環境放射線測定器KIND クルックス管、WEBカメラを使った実験 放射線教育支援サイト“らでぃ”」
日本科学技術振興財団
掛布 智久

概要

日本科学技術振興財団では、放射線教育支援サイト“らでぃ”(https://www.radi-edu.jp/)を運営しています。
e-ラーニングとしてのキッズページ、実践紹介、動画・写真等のダウンロード、放射線測定器貸出、放射線授業事例コンテストなど、放射線教育を実践している教員に対して積極的にサポートしています。
最近のトピックとして、クルックス管から放出するX線を測定器(KIND-mini)で検知して防護に役立てる方法、WEBカメラを使ったX線の可視化とその実験例、タブレットと測定器(KIND-pro)をつなげてGPS情報と測定値をタブレット内の地図上にプロットする方法を紹介しました。

第2部 実践事例発表

「リテラシーとしての放射線 知的好奇心の対象としての放射線」
名古屋経済大学市邨高等学校中学校
大津 浩一

概要

放射線リテラシーの涵養だけでなく知的好奇心の喚起が放射線教育の2本柱となることを期待して、本校主催で5年にわたって県内中学校の先生を対象とした講座の報告と、クルックス管と林式霧箱の授業で活用できる内容を紹介した。
クルックス管からの漏洩X線に対して先生方の不安を払拭する実験法を提案し、ドライアイス冷却で自然放射線を観察できる霧箱を各自で製作し持ち帰っていただき、中学校での活用をお願いしている。
授業例では、小型霧箱の有用性とミスリードの可能性を指摘し、林式霧箱でのタブレットを活用しての生徒による軌跡の弁別、自作の放射線の動画カタログを見ながらのα線、β線、μ粒子の同定、霧箱観察でのクルックス管からの放射線の検出と遮蔽を紹介した。

「新しい放射線学習と教材開発」
美浜町エネルギー環境教育体験館「きいぱす」/福井県児童科学館
小鍛治 優

概要

学習指導要領の改訂で、中学校理科で第2学年から放射線の性質と利用を扱うこととなった。この改定により、これまでの原子力の平和利用から、放射線発見に始まる近代科学の扉を開けたといわれる科学史をたどる扱いが可能になったと考えている。そこで、中学2年生対象の新しい指導案と教材を作成し実践した。その指導計画は、以下の3時間からなっている。多くの先生方に参考にしていただければと考えている。
(1)放射線の存在を確認し、その性質について理解する
(2)放射線の発生の仕組みを理解する
(3)放射線の利用方法と人体への影響を理解する

「目的意識を育てる放射線教育 ~中学校の実践から~」
世田谷区立千歳中学校
青木 久美子

概要

「放射線の授業は難しい。」と複数の教師から聞くことが多い。原因として「教師が学習経験を思い出せない。実験の経験がない。」ことや、授業のねらいや展開が分かる指導案が少ないことを挙げている。そこで、学習指導要領を基に「科学者と科学史に触れる」、外部の支援を受けて「実験や観察を取り入れる」ことを特徴とした中学校第2学年の指導計画を作成し実践を報告した。社会全体で取り組む課題の一つとして「放射線に関わることやエネルギー問題を学ぶこと」の意義を見つけるために、生徒と共に教師が学べる環境が望まれる。

「放射線教育を行う上での問題点と要望・希望」
愛知教育大学附属名古屋中学校
奈良 大

概要

平成29年度告示中学校学習指導要領が全面実施されて1年が経過した。 主に今回の改訂で新たに加わった中学2年生での放射線に関する学習内容などについてであるが、放射線教育を行う上で自分や自分の周りの先生方が感じていらっしゃる問題点と要望・希望をまとめ、発表させていただいた。長期的な視点で解決しなければならないものが多いと感じているが、今後も放射線教育を支えていらっしゃる様々な立場の関係者と議論を重ねていくことで解決の道が開け、目の前の子どもたちによりよい放射線教育ができるようになることを切に願っている。

第3部 質疑応答・ディスカッション

参加者の方々から多くの質問をいただきました。ディスカッションでは、各地域の教育現場での悩みや課題の共有など、話し合いがさかんに行われました。